保健医療における 価格設定と価格統制

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ 推進に向けた教訓

Volume,Pages 100
Authors :
Sarah L Barber, Luca Lorenzoni and Paul Ong
Publication Date : June 2019
Language : English

WHO健康開発総合研究センター(WKC)と経済協力開発機構(OECD)は、全ての人が基礎的医療サービスを受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に向けた各国の取り組みの進展の加速を支援するために、保健医療における価格設定および価格規制に関する新たな研究についての発表を行った。

研究者達は9つの国・地域に関する事例研究を完了し、特に低所得国と中所得国における価格の設定と規制に対して、得られた教訓を取りまとめ、更なる研究の対象となる領域を特定した。

本研究は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けた国 際公約の実現を目指す各国を支援するため、実施された。その 目的は、価格設定と価格統制に関する経験を集め、最適事例を 創出し、将来的な研究領域を特定することにある。特に、中所 得国に対する示唆に焦点を当てている。

 

保健医療の価格設定:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて努力する中で、なぜ 重要なのか

国民全員が経済的困難にさらされることなく質の高い保健医療 に確実にアクセスできるように、あらゆる国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジを公約に掲げている。実際には、誰を対象とするのか、どのサービスを対象とするのか、いくら支出するべきかを政策決定者が決定する必要がある。その過程では、保健医療サービスの価格とその価格を決定する方法に、これまでほとんど注意が払われていなかった。しかし、価格とは、費用に対する十分な支払いを効率的な医療提供者に保証するだけで
なく、良質のサービスを提供し良いアウトカムを患者にもたらそうとするインセンティブを医療提供者に付与するものでもある。

統制された保健医療価格の設定:9ヵ国から得られた教訓

本研究は、価格設定および価格統制に関する9ヵ国の経験を集め、最適事例を見出そうとするものである。特に、健康関連の財政支出が急速に増加している低中所得国に対する示唆に焦点を当てている。本研究では、以下に挙げる重要な教訓が得られている:

  • 原価、量、アウトカムに関する情報収集を目的として、データ・インフラストラクチャに投資する。
  • 提供サービスの費用を見積り、公式に利害関係者とコミュニケーションし、健康関連の幅広い目標に適った価格を実現するため、組織能力を向上する。
  • 支払い制度変更の長期的な計画に着手するため、順序だった実施計画を立てる。
  • 最も効率の良い医療提供に近づくための「効率的な」価格を設定する。
  • 医療支出の価値の訴求手段として価格を使用する。
  • 価格設定における国の役割を強化する。当局による片務的な価格設定は、質や患者の重症度に関係なくバラついている価格を排除できる。買い手と売り手による個別交渉と比較すると、保健医療費の拡大抑制においても上手く機能する。団体交渉や片務的な価格設定はいずれも、質向上の可能性という点で個別交渉より優れている。
  • 実施中の改正、モニタリング、評価のためのシステムを確立する。

理想的な価格設定のプロセスや医療提供者への支払いの仕組みというものは存在しない。価格は、費用をカバーするだけでなく、健康医療の幅広い制度に関する目標に向けた適切なインセンティブにもなる。幅広い制度の目標を実現しようと各国が取り組んできたが、最終的に、このような目標こそが政策の選択を助けることになるのである。