慢性疾患を抱える高齢者の生活の質や保健サービスの利用を最大限に向上させるサービス提供モデルの構築

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実施期間:

Phase 1: 2017年9月~12月

Phase 2: 2019年8月~2021年1月

連携機関:

 

代表研究機関: キングス・カレッジ・ロンドン、南カリフォルニア大学(USC)

参加研究機関:  神戸大学、京都大学、市立芦屋病院、カタラン腫瘍研究所(スペイン、バルセロナ)

主導研究者:     Matthew Maddock, Catherine Evans(キングス・カレッジ・ロンドン)、Joanne Yoong, Lila Rabinovich(南カリフォルニア大学)

研究対象地域:

世界各国

総予算:
Phase 1: 40,000米ドル; Phase 2: 142,000米ドル

 

背景

人口の高齢化が進むにつれ、高齢者の機能や生活の質(QOL)を最大限に向上させるため、保健サービスと社会サービスを高齢者向けに再編する必要があります。そのためには、高齢者のニーズに応え、求められる目標を達成するため、保健医療制度とサービス提供を、特に慢性疾患を抱える高齢者向けに、根本から変革しなければなりません。

Phase 1:2017年、高齢者のQOL を最大限に高めるサービスモデルの効果を検討したシステマティック・レビューを対象として、迅速なスコーピング・レビューを実施しました。特定された2238件のうち、条件を満たしていた72件において解析がなされました。総合的な高齢者ケア(身体的機能に重点を置く)と総合的緩和ケア(症状や不安に重点を置く)に大きく分類されたサービスモデルは、高齢者のQOL向上に効果を示しました。しかし、どのサービス提供モデルがどのアウトカムに寄与しているのか、また、資源が限られている低・中所得国(LMIC)の状況にどのモデルが適しているのかについては、結論が得られませんでした。

Phase 2:このため、このスコーピング・レビューの一次研究について詳しく検討します。

 

目的

Phase 2は、三次資料文献調査を通じて、慢性疾患を抱える高齢者のQOLの向上と保健サービス利用の最適化の両方を特定するサービス提供モデルの構築を、一次文献に戻すことにより提示することを目的とします。本研究は、臨床、保健医療サービス提供者、マクロ経済政策の環境という観点から検討するもので、様々な背景で機能するモデルに必要な要素を明らかにします。

 

研究手法

  1. 保健医療サービス提供者および医療サービスの提供に関する研究を専門とするチーム(キングス・カレッジ・ロンドン)、またはマクロ経済政策の環境および保健医療サービス提供者の研究を専門とするチーム(USC)の2チームが各々独立して、Phase 1のスコーピング・レビューで特定した一次研究を解析します。
  2. 高齢者の一連のケアを通じて、どうすれば求められるアウトカムを達成できるかについて明らかにするため、両チームが各々の専門性に基づき、サービス提供モデルやその要素、提供者、提供方法の間にあるつながりを同定・評価します。
  3. 得られた知見について情報交換し、共同報告書を作成するため、2020年の第1四半期にWKCによる専門家会議が開催される予定です。これにより、高齢者にとっての適切なアウトカムを達成できるサービス提供モデルの、臨床、保健医療サービス提供者、政策、制度の各要素を関連づけた構築が期待されます。

 

 

結論

Phase 1の研究の結果、目指すアウトカムは異なるものの、総合的な高齢者ケアまたは総合的緩和ケアに分類されたサービスモデルは、終末期に近い高齢者のQOL向上と症状改善に効果を示しました。患者のニーズや求めるアウトカムに応じたサービスの利用に関して、両モデル間に相乗効果が認められる領域は一連のケアで統合することが重要です。その拡張性には、ヘルスケアとソーシャルケアの両者を包含した経済学的分析や、健康格差の背景要因を把握するために、必要な財源の検討が求められます。

 

 

「終末期の高齢者の生活の質を最大限に高めるサービスモデル:ラピッド・レビュー」Evans et al.ミルバンク・クオータリー、2019年、97(1):113~175)

 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1468-0009.12373