2017-07-31

WHO神戸センターと神戸大学、認知症の早期発見・早期介入をめざす 「神戸モデル」構築に向けた共同研究が本格開始

WHO神戸センターと神戸大学は、認知症の早期発見・早期介入をめざす「神戸モデル」構築をめざした3年間の共同研究「認知症の社会負担軽減に向けた神戸プロジェクト」のプロトコルがWHO倫理委員会によって承認され、8月1日から本格的な研究を開始する運びとなりました。

認知症は世界規模で急速に増加しています。日本の認知症患者数は450万人以上で、軽度認知障害を含めると、800万人以上が認知機能の障害を抱えていると報告されています(2012年、厚生労働省)。その数は、今後さらに増加すると見込まれています。そして、少しでも認知機能の低下、認知症の重症化を遅らせるために、早期発見、早期介入の重要性が注目されています。

本研究では、WHO神戸センターと神戸大学が中心となる共同研究チームが、神戸市の協力のもと(神戸市がデータを提供)、① 約8万人の70歳代の神戸市民を対象とした「基本チェックリスト」調査の解析、②「基本チェックリスト」回答者のうち認知機能低下を原因とした将来の介護リスクが高いと思われる約5000人に対する追加調査の実施と解析、③ 神戸市が今年度から開始した「フレイルチェック」参加者のうち同意が得られた方(約5000人を想定)に対する認知機能と将来の介護リスクに関する追加調査の実施と解析、④ 神戸市が昨年度実施した「認知症予防教室」受講者のうち約100人に対する追加認知機能訓練の実施とその長期予後に関する評価など、包括的な研究を実施します。



本研究のポイント

  • 高齢者のある時点における認知機能と、将来的な介護リスクの関係性を明らかにする。
  • 認知機能低下を遅らせる効果的な介入方法に関するエビデンスを探索する。
  • 認知症の早期発見、早期介入を実現する地域モデルを提示する。
  • 日本国内のみならず世界に向けて政策オプションを提供する。

WHO神戸センターのサラ・ルイーズ・バーバー所長は「この研究の目的は認知症の患者さんとそのご家族の生活の質を向上に寄与することです。さらに、地元のみならず世界の認知症対策へエビデンスを提供し、今後のコミュニティベース・ケアへの布石となることを期待します」と述べ、本研究の代表者である神戸大学医学部附属病院臨床研究推進センター 永井洋士特命教授は「本研究を通じて神戸市における現状調査、介入、フィードバックの好循環が生まれることを期待します。研究の成果は、学術雑誌やその他の広報を通じて国内外に発信され、他都市の政策立案に益するモデルの提示、エビデンスの提供に貢献することが期待されます」と語っています。

リサーチ主導施設:神戸大学 

  • 主導研究員:永井洋士 神戸大学医学部附属病院 臨床研究推進センター 特命教授
  • 古和久朋 神戸大学大学院 保健学研究科 リハビリテーション科学領域 教授
  • 山本泰司 神戸大学大学院 医学研究科 病態情報学分野 准教授
  • 小島伸介 公益財団法人先端医療振興財団 臨床研究情報センター 医療開発部
  • 前田 潔 神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 特命教授
  • 茅野龍馬 WHO神戸センター テクニカルオフィサー

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